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清泉メッセージ
201606.23
No100「いのちのスープ」
皆さん、清泉祭、本当にお疲れさまでした。皆さんは、疲れた時にはどんな食べ物が食べたくなりましたか?がっつりと肉系?甘いもの系?それともラーメンでしょうか…。食べ物は私たちを幸せな気持ちにしてくれて、心と体を癒す効果があると共に、命を支えるという根本的で重要な働きもあります。しかし、私は疲れている時にも自分で食事を作らなくてはならないという現実にうんざりします。時間との戦いの中で、思ったよりもうまく作れなかったり、品数がそろわないことに対する罪悪感もあります。しまいには、人は何で食べるのだろう、食べなくていいなら本当に楽なのに…と思うこともしばしばです。
食べるということは私たちに喜びや明日を生きる元気を与えてくれる一方、現代の日常生活では気持ちにも時間にも余裕がなく、料理に時間をかけることができないのが実際のところです。しかしそんな中、あるスープの存在を知って、食べることに対する私の考え方がちょっと変わりました。
それは、現在91歳の現役の料理研究家、辰巳芳子さんが作っておられる「いのちのスープ」です。白髪でお団子あたまの辰巳さんをテレビで見たことがある人もいるのではないでしょうか。この「いのちのスープ」は、辰巳さんのお父さんが病気で食べ物を上手に噛めなくなったとき、スープなら飲めるのではないかと考えた辰巳さんが、試行錯誤を重ねて作り上げた数々のスープです。どのスープも本当にシンプルですが、手間がかかっています。「早い・安い・片づけも楽」といった現代の日常の料理に求められる要素はそこには全くありません。しかし、相手に食べる喜びを味わってもらいたいと心を込めて作られるスープを見て、「食べることは生きること、心を込めることは愛すること」なのだと、あらためて思い知らされます。その後、辰巳さんのスープ作りを知ったホスピスなど多くの病院関係者や幼児教育者が作り方を教わり、いろんな世代の人々に「いのちのスープ」が広まっています。
私もこの火曜日、「いのちのスープ」を作ってみました。本当のことを言うと、これまで二回つくっても、見た目と味が完璧とはいきませんでした。しかし、食べることの意味を考えながら、これからもスープ作りにチャレンジしていきたいと思います。
(6月23日、放送朝礼より。写真出典: http://www.tatsumiyoshiko.com)