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校長講話
202010.05
校長講話_NO.158「ドイツの文化大臣の言葉」
先週の朝礼で、不要不急のものこそが長い人生の中では大切なものである、ということをお話ししました。不要不急のものの大切さを私たちは今回のコロナウイルスの出来事を通して学んだのだと思います。不要不急のことで是非あらためて思い起こしたいことがありますので、少し前のことではありますが、今朝はそのことをお話しします。
思い起こしたいことはドイツの文化大臣の言葉です。世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの拡大はパンデミックになったと伝えたのは3月の半ばでした。世界中が一種のパニック状態にあった時期です。その時期、ドイツの文化大臣が「文化事業者への大規模支援」を発表しました。その中で述べられたことは日本でも広く報じられましたので、覚えていらっしゃる方も多いことでしょう。
ドイツのモニカ・グリュッタース文化大臣が3月の大変な時期に語った言葉を一部紹介します。「不要不急」とみなされがちな文化、芸術について彼女は次の様に語りました。
「現在の状況が文化と創造にかかわる経済にとって、とりわけ、小規模の文化施設とフリーランスのアーティストの方たちに、深刻な逼迫(ひっぱく)をもたらしかねないことは理解しています。(中略)われわれは、しかし、現在の状況にあって、文化は良き時代においてのみ享受される贅沢品などではない、と認識しています。ある一定期間、文化活動を諦めなければならないとすれば、それがどれほどの喪失であるかも、われわれは理解しています。(中略)芸術家と文化施設の方々は、安心していただきたい。私は、文化・クリエイティブ・メディア業界の方々の生活状況や創作環境を充分に顧慮し、皆さんを見殺しにするようなことはいたしません。」
このモニカ・グリュッタース文化大臣の言葉は日本でも様々な反響を呼び起こしました。日本とのあまりにも大きな違いを指摘する方もいました。しかし、私が強く感じたのは次のことです。モニカ・グリュッタース文化大臣は、彼女自身が文化や芸術の価値を実感しており、日々の生活のなかで文化や芸術に触れ、それらをかけがえのない大切なものとしている方なんだろうな、ということです。彼女の言葉には大臣としてのコメントを越えた力強さがあり、彼女のものの考え方、哲学が感じられます。私たちが、少なくとも私が政治家に期待するのは、血の通った、生身の人間から発せられる言葉です。私はモニカ・グリュッタースさんの語った言葉は政治家の語る言葉の見本のようなものだと感じました。皆さんはどう考えるでしょうか。
ヒガンバナ(2020年9月30日撮影)