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校長講話

201506.27

校長講話_27「雨の日の思い出」

2015kou2.JPG 人間の記憶とは不思議なものだと時々思うことがあります。何かの折に、どこかへ旅行に行った時の何でもない光景がよみがえってくることがあります。その土地では幾つかの観光地に行ったにもかかわらず、観光地についてはほとんど忘れてしまっていて、昼食をとった小さな食堂の光景が鮮やかに思い出されたりする。どういうものが記憶に残り、どういうものを忘れ去ってしまうのか、よくわかりません。記憶というのは不思議だな、と思います。

 毎年、6月の雨の季節になると、時々思い出すことがあります。もう40年以上前の、私が中学1年生の時の思い出です。今朝はそのことをお話しします。

 6月のある日、私と友人は学校が終わって、二人で畑の中の道を歩いていました。すると、急に激しい夕立に会い、二人ともずぶ濡れになってしまいました。畑の中の道ですので、雨宿りする所もなく、しょうがなく、雨に打たれて歩き続けました。その時、40年以上経った今でも耳に残っているような気がするのですが、後ろからタッタッタと駆けて来る足音が聞こえました。振り向くと同じ中学校の女の先輩が駆け寄って来て、「あなたたち、これを使いなさい」と言って自分の傘を僕たちに渡し、自分はそのまま雨の中を走って行ってしまいました。多分、とっさのことで、僕たちはお礼もきちんと言えなかったのではないかと思います。そのお借りした傘をそのあとどうしたかは覚えていません。覚えているのは雨の中の数分間だけです。

 初めにお話しした様に、人間の記憶は不思議なもので、どんなことが記憶に残るのかよくわからないところがあります。ただ、このことは言えるのではないでしょうか。親切にされたことは覚えている、ということです。昔の旅のことを思い出すとき、名所旧跡のことは大方忘れてっしまっていますが、旅先で親切にされたことは覚えています。

 昨日、嬉しいことをお聞きしましたので、皆さんにお伝えします。先日、上越市から観光にいらしたお年寄りの方々が、東山魁夷館の場所がわからずに困っていました。通りかかった本校の高校3年生が美術館まで案内して差し上げたそうです。その方たちは本校生の親切がとても嬉しく、お礼のお手紙を下さいました。その方々にとって長野観光の良い思い出が出来たことでしょう。

 今朝は私のささやかな思い出についてお話ししました。

(6月24日、放送朝礼より。写真と本文とは関係がありません。)

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