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校長講話
201609.14
校長講話_58「9月の思い出」
私は、大学3年の秋、9月の上旬から下旬にかけて、ちょうど今頃です、3週間程、北海道を旅していました。予定は全くなく、まさに足の向くまま、気の向くままの旅でした。今と違って、鉄道は国有で、多くの路線が廃止されておらず、列車だけでもあちこちへ行くことが出来ました。
青森から、青函連絡船で函館に渡り、札幌を通り、旭川を抜け、最北端の町、稚内に行く。フェリーで最果ての島、礼文島に渡り、そこで3日間程過ごして、オホーツク海沿いを、網走に向かいました。その頃には、私の旅も終わりに近づいていました。
湖の水の透明度で有名な摩周湖の近くに川湯温泉という町があります。そこのユースホステルに一晩泊まりました。夕食後のミーティングで、宿泊客とスタッフが一人一人、自己紹介をしました。その時、そこでヘルパーをしている女の子が、ヘルパーと言うのはアルバイトの人ですが、こんなことを言ったのです。「私は今日がヘルパー生活最後の日です。出来れば、ここでの思い出に、明日藻琴山に登りたいのです。でも、今は熊が出るので、1人で行く勇気がありません。誰か一緒に行ってくれませんか。」
その夜の泊り客は十数名で、私を除いて、二人、三人のグループで来ていました。予定のないのも私だけのようでした。「僕で良ければ」と言って、彼女と一緒に藻琴山に登ることになりました。
翌日は良い天気で、いろいろな話をしながら、その山を登って行きました。彼女は、3ヶ月、ユースホステルで働き、お金が溜まると、そのお金がなくなるまで北海道を旅する。お金がなくなると、またヘルパーの仕事をして、次の旅の為のお金を貯める、そんな生活を3年間送っていると言いました。
私は、彼女の自由な生き方をとてもまぶしく感じると同時に、たくましさに驚かされました。生き方というのは自分一人でしっかりと決めていけばいいのだと、思ったことを覚えています。
山をおりて、彼女の知り合いがいるという釧路まで、網走と釧路を結ぶ線路、釧網線で、一緒に行きました。その後、彼女がどんな人生を送っているかはわかりません。ただ、とても豊かな時間を過ごせたなあと、今でも時々その旅のことを思い出します。
私の、9月の思い出です。
(2016年9月14日、放送朝礼より。
写真出典: http://www6.marimo.or.jp/k_emc/mokotoyama_1.jpg)