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校長講話
202107.17
校長講話_NO.189「立花隆さんのこと」
先日、数多くの良質なノンフィクションを書いた立花隆さんの死が報じられました。皆さんの中にはニュースでご覧になった方もきっといることでしょう。立花隆さんは4月30日にお亡くなりになりましたが、その死が公にされたのは6月も下旬のことです。ある人は、このような形の死の公表にも立花さんの死生観が現れているのではないかと、追悼の文章の中で書いていました。
私は立花さんの本はほんの数冊しか読んでいません。それでも立花さんが一冊の本を書き上げるのにどれほどのエネルギーを注いでいるかは感じ取ることが出来ました。立花さんの本を食べ物に例えると、果物で言えば固いリンゴでしょうか。まず、しっかりと噛まなければなりません。ぶどうを食べるようには食べられません。噛んでいると、甘味、酸味が口の中いっぱいに広がってくる。一つ食べ終わるとものを食べた、という満足感が湧いてきます。
本にも様々あって、さっと読み流してしまうことの出来る本、筋だけを追って楽しめる本、どれが良い悪いということではありませんが、立花さんのお書きになる本は大げさに言えば人に本を読む覚悟を求める本だったのではないかと思います。皆さんのような年頃にあっては、時には立花さんの書くような本と向かい合うことはとても貴重な経験となることでしょう。
追悼の記事を読むと、「知の巨人」という言葉が見出しに使われています。けれども立花さんは近寄りがたい人ではなかったと思います。もう20年近く前になるでしょうか、NHKのテレビ番組で立花さんは自分のことを「勉強屋」と言っていました。なぜか、その言葉を今でもよく覚えています。八百屋、花屋、本屋、花の大好きな花屋さんのように、本を愛する本屋さんのように、立花さんは勉強するのが好きなのだと言っていました。立花さんの勉強は、「政治」、「宇宙」、「科学技術」、「生と死」、「動物」と際限がありませんでした。そしてご自分が勉強したことを私たち読者に丁寧に伝えようとしました。
図書館に立花さんの本のコーナーを作って頂きます。是非、歯ごたえのある本を読むことの楽しさ、時には苦しさ、を立花さんの本を読んで経験してほしいと思います。
図書館前に開設された立花隆コーナー