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清泉メッセージ
201610.31
No112「本には夢と心がある」
随分前の話になりますが、私の子供 が小学生の時、毎日音読の宿題が出され、大きな声で国語の教科書を読んで聞かせてくれました。その中で、今も私が覚えているものを、今日は、紹介しようと思います。
アメリカのスティーヴン キャラハンという人の実話です。 キャラハンは、カナリア諸鳥からカリブ海へ向けて小型ヨットで航海していましたが、ある日の深夜、ヨットは嵐の中、鯨に激突されて沈没してしまいます。ゴム製の救命いかだに乗って、大西洋をたった 一人、キヤラハンの孤独な漂流が始まります。海で遭難した人の90%は、孤独と恐怖で、わずか2日以内に死んでしまうと言われています。しかし、食料のない状態から、キャラハンが自力でカリブ海に浮かぶグアドループ島にたどり着いたのは、なんと76日目だったのです。いかだの修理とか、魚を捕るとか、毎日自分に課題を課し、漂流という不規則な生活の中に規則を作り、漂流を航海にしていったのです。 キャラハンはこう言っています。
「ただ寝転がっているより、肉体的な苦痛は伴うが、生きるために努力することの方が楽に思えた。」
私は この言葉に感動しました。苦しい状況の中で、その時を一生懸命に生きる。私はとうていキャラハンにはなれませんが、生きていく上での手本にしています。
このように、皆さんも、本から多くのものを学んでいることでしょう。振り返ってみると、大学時代には、横溝正史や 松本清張の推理小説を多く読み、犯人捜しに夢中になりました。 これも読書の持つ本来の楽しさです。松本清張の 『砂の器』は、事件解決の手がかりが、日本の方言分布から始まるなど、 読者を引き込む松本清張の作風がよく表れています。そして、単に犯人探しに終わらず、当時、日本社会が抱えていた問題を背景にしながら、登場人物の心情までをも考えさせられる長編小説です。スケールの大きさに驚きました。
本には、夢と心があります。そして、今思うことは、若い時に読んだ本の方が強く心に残っているということです。若い時は感性が豊かですが、まだまだ間的には「未完成」で成長の段階にある時です。その時に、皆さんには、数多くの本に触れ、人の考えを知り、心を大きく豊かにしていってもらいたいと思います。今日はぜひ図書館に足を運んでみてはどうでしょうか。
(10月27日、放送朝礼より。 写真: 今日の図書館の風景より。)