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清泉日記
201210.19
No16 放送朝礼講話「東京駅の復原 によせて―古典の持つ力」
先日、出張で東京に行った際、東京駅の丸の内口を出て、復原された東京駅を見ました。まず、よくここまで復原したな、と驚きました。以前ほどではないにしろ、古い物を壊し、新しい物を建てるということが、あちこちで行われ続けています。長野市でも、この間、市民会館が取り壊されました。市民会館は、小布施の修景事業の先頭に立つ宮本常長という建築家の若き日の作品ですが、惜しげもなく壊されてしまいました。残念に思います。
私の想像ですが、東京駅の復原は、まず一人の人が思い付いたのではないでしょうか。そして、会議か何かでそのことを提案する。初めは誰も耳を傾けようとはしない。しかし、その復原を思い付いた人には、東京駅を復原すればきっと立派なものになるという信念があったので、周りの人たちを粘り強く説得し、賛同者を増やしていく。建築家の安藤忠雄は「人は夢を持つから、トラブルや困難なことが生じる。」と言っています。別な言い方をすれば、「人がトラブルや困難なことに向き合うのは、夢を持っているから。」とも言えます。この東京駅の復原を思い付いた人も様々な困難を乗り越えたに違いありません。東京駅の復原にはそんな隠されたドラマが幾つもあるように思います。
少し、話は飛びますが、今、お話しした時が経てば経つほど、輝きを増すものと言えば他にもあります。皆さんは何を思い浮かべますか。私の思い浮かべるものは古典と言われる本です。古典と言っても、徒然草や源氏物語といった日本のものだけではなく、シェイクスピア、もっと古くはギリシアのプラトンなどの書いた本です。古典の多くは岩波文庫に入っています。今度本屋さんに行ったら岩波文庫の棚の前に立って本を探してみましょう。この読書の秋に、古典と言われる本を読んで、本物の持つ力に触れてほしなと感じています。以上で私の話を終わります。
(2012年10月11日、放送朝礼講話より、写真:http://www.jreast.co.jp/tokyostation/?src=brandpanelより転載)