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清泉メッセージ
201310.01
No17「大切なものは目に見えない」
皆さんは『星の王子さま』という本を読んだことがありますか?フランスのサン・テグジュペリという人が書いた大人の童話と言われている作品です。私が通っていた中学・高校には『星の王子さま』を好きな先生が何人かおられたので、文中の同じフレーズを何度も聞く機会がありました。それは王子様に向かって狐が言う言葉で、次のようなものでした。「大切なものは目に見えないんだよ。」当時は「ふーん、またか」という感じで、深くその意味を考えたことなどありませんでした。
しかし、それから月日は流れ、今回こうして皆さんにお話しする機会が与えられた時、「大切なものは目に見えないんだよ」という言葉が再び私の中によみがえってきました。
皆さんにとって大切なものは沢山ありますよね。勿論、目に見えるものから見えないものまで様々で、人によって違うかもしれません。では、例えば、親切や優しさ、愛、友情、はどうでしょう。これらはいずれも見えないものですが、確かに存在しています。しかも、このような見えない宝物がないと、どんなに物質的に恵まれていても、つまり、手で触れ、目で見える宝物を持っていても人間は幸福にはなれません。お金や肩書、学歴など見えるものだけでは不十分でしょう。勿論、目に見える物質的生活条件を向上させるよう努力することも必要です。が、そのことだけに関わって、見えない世界のことを忘れると私達の毎日は深みのないつまらないものになってしまうでしょう。カトリック教会は2千年近く、そのミサの中で「心をあげて神を仰ごう」と祈っています。私達が見える世界の中におりながら、見えない世界に心をあげていると、見える世界も変わってきます。
忙しい毎日を送る私達です。宿題や受験勉強とやらなければいけないことは山積みです。そして、テレビやインターネットからは無数の情報が入って来ます。このような状況では、目に見えるものや耳に入ってきたことばかりを信じがちです。しかし、忙しく情報過多の毎日の中でも、本当に大切なもの、本当にすべきことはそう多くはないのではないでしょうか。周囲の人の言動も見えるものだけで判断しないで下さい。実は発せられた言葉の中に思いやりがあったり、一見、叱られているようでもそこには深い愛情があったりします。
最後に古代キリスト教の神学者アウグスティヌスの言葉を紹介いたします。彼は「信仰」について述べています。皆さんは先日の合唱コンクールの課題曲で歌ったものですが、信仰とは何でしょうか。アウグスティヌスはこう言います。「信仰とは、目で見えないものを信じることである。」
皆さんもせっかく長野清泉というカトリック校に入学したのですから、目に見えない大切なものについて考えてみてはいかがでしょうか。日頃の出来事の中に私達は人間を超えた方の存在をふと実感することもあるでしょう。
(写真出典:http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/11/3/1108000.html)