メニュー

お知らせ

長野清泉女学院中学・高等学校 > >

News 清泉メッセージ

清泉メッセージ

201402.03

No27「挑戦、継続、分析、そして想像する力」

IMG_8877.JPG今日は「iPS細胞の開発」で、ノーベル医学・生理学賞に輝いた山中伸弥(やまなか しんや)先生のお話です。

「iPS細胞」は、皮膚などの細胞を受精卵に近い状態にまで戻したもので、さらにこれを様々な細胞に育てることができるというものです。受精卵から赤ちゃんの体のすべてが作られることは、中学1年から高校3年生までのすべてのみなさんが学習していますね。このどんな細胞にも変化できる 「iPS細胞」を作成できたことは、受精卵そのものを利用しないですむという生命倫理の問題点をクリアしたうえで、医療の発展に貢献できるというすばらしいものだったのです。

さて、山中先生はこのiPS細胞を皮膚の細胞からどのようにつくったのでしょうか。多くの研究者が挑戦してきたこの課題を、たった4つの遺伝子を組み込むだけという非常に単純な方法で実現します。
この方法そのものは単純でも、この方法を発見するまでの道のりは単純ではありません。

山中先生は時間をかけて研究し、iPS細胞を作るのに必要な遺伝子を24個に絞っていました。この遺伝子全てを皮膚の細胞に入れると受精卵に近い細胞ができました。

しかし、本当に必要な遺伝子はその中のいくつなのか?もちろん最初から4個だとわかるわけではありません。ひとつかもしれないし、24個すべてかもしれないわけです。みなさんだったらこの課題にどのように取り組みますか?少し考えてみてください。

この絞り込み作業には、山中先生も頭を抱えました。仮に少し話を単純化して、この24個の遺伝子のうち、「4つ」が必要だということがわかっていたとしても、それには10,626通りの組み合わせがあり、同じ数だけの確認実験が必要になることを意味します。高校生は、この組み合わせの計算を後ほど確認してみてください。

さて、山中先生は膨大な組み合わせを実験で確認することは、時間と労力が追いつかず不可能だと考えていました。この問題の解決の糸口を見つけたのは、山中先生本人ではなかったそうです。同じ研究チームの仲間の一言が突破口となりました。その内容は「導入する遺伝子を1個ずつ減らしてみてはどうか。」24個から1個だけ遺伝子を抜き、細胞に導入するという発想でした。これにより、4つの遺伝子がなかった場合にiPS細胞ができないという絞り込みができ、さらに、最後にこの4つの遺伝子だけを導入することでiPS細胞ができることが確認され、目標が達成されたそうです。

このエピソードは、私にとって多くの教訓を示唆するものでした。iPS細胞を開発して社会貢献しようとする「挑戦する力」から始まって、研究を続けるうえでの「継続する力」「分析する力」はもちろん重要です。さらに、最後に立ちはだかる壁を乗り越えるためには、仲間とコミュニケーションをはかり、工夫するという「想像する力」が必要であったこと。

学校教育だけではなく、広く学び続ける必要のある人間にとって大切な姿勢や力を教えてくれているように思いました。みなさんはどのようにお考えになったでしょうか?

(本文と写真は関係ありません。なお、この講話は1月23日に行われました。「STAP」については、また別の機会をと願っていますが。)

Contactお問い合わせ

お気軽にご相談ください。

Tel.026-234-2301

Fax.026-234-2303

error: Content is protected !!