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清泉メッセージ
201502.21
No48「ありがとう」
「ありがとう」は美しい日本語だと思います。私に「ありがとう」の意味を教え、生きるヒントを与えてくださったのは中学時代のシスターです。私は中・高の6年間を長崎の親元を離れて、熊本のミッションスクールの寮ですごしました。中1から高3まで1部屋10人前後の共同生活です。寮の規則は厳しく、上級生やまわりの目を気にしながらすごす日々は窮屈でストレスの多いものでした。
ある時、規則違反をして、寮生を指導しておられたシスターに、注意された事があります。素直に、「ごめんなさい」と言えばすむ事でしたが、皆が見ていたこともあって、生意気盛りの私は反抗的な態度を取り続けました。するとシスターは、涙を浮かべ、「人に注意されたらありがとうと言うものですよ」と再度諭しました。私は、「ありがとう」は、目に見える何かをいただいた時に言うものだと思っていました。その場では謝りましたが、心の中では、「注意されて嫌な思いをしたのに、どうしてありがとうなの?」と納得がいかず、そのことがずーっと心に引っ掛かったままでした。
やがて社会人となり、子どもを育てるようになってようやく、シスターの言葉の意味がわかるようになりました。子どもは大切な存在であり、子どもの成長を願うからこそ、嫌われても注意するし、叱るのです。あの時、叱ってくれる人がいて、自分を磨き成長できるチャンスがあったのに、未熟な私はそのことに気づくことができませんでした。
今思えば、シスターは親代わりとなって、私を躾け育てて下さったのです。その思いに対しての「ありがとう」だったのです。ふとした時に、あの時のシスターの悲しげな表情と言葉を、感謝と後悔の気持ちと共に、なつかしく思い出します。求めた答えは、その時はわからなくても、後になって示されるものだと実感しています。
(本文と写真とは関係がありません。)