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201706.28
校長講話_80 「複雑なことは複雑にしか言えない」
『男はつらいよ』シリーズや、木村拓哉主演『武士の一分(いちぶん)』などで知られる、映画監督の山田洋次さんが、6月14日の信濃毎日新聞、『「共謀罪」私の視点』というコラムで、次のことを述べています。お読みします。
「シンプルな論理の奥には、往々にしてうそがある。複雑なことは複雑にしか言えない。複雑な現代社会で、単純で分かりやすい物言いには警戒すべきだ。」
「複雑なことは複雑にしか言えない」という言葉が強く印象に残りました。
夏目漱石に『三四郎』という長編小説があります。主人公の三四郎という青年の青春、恋愛が描かれていますが、「青春」や「恋愛」は複雑なものです。「青春とはこういうものだ」とか、「恋愛とはこういうものだ」と一言で単純には言えないから、漱石は『三四郎』という長編を書き、そこで自分の考える「青春」や「恋愛」を言い表そうとしたのだと思います。
「なぜ、本を読むのか」という問いには、本というものが生まれてから、多くの人が自分なりの答を述べてきました。山田洋次さんの言葉を借りれば、「複雑にしか言えない」ことを考えるために読む、というのも答えの一つになるかもしれません。
6月25日の信濃毎日新聞に、読書についての調査結果の記事が出ていました。漫画や雑誌を除いた本を一ヶ月に全く読まない人が、33パーセントに達したとのことです。つまり、3人に一人は全く本を読んでいないということのようです。原因は「スマートフォンやゲームに使う時間が増えた」ためと書かれていました。皆さんはこの数字をみてどう感じるでしょうか。
私は、「複雑なことを考えられない」人が増えてしまい、日本の社会はますます住みづらくなっていくのではと思うのですが、こう考えるのは単純に過ぎるでしょうか。
来週から定期考査が始まります。私は、高校の頃試験前になると、いつにもまして本が読みたくなり、困りました。色んな誘惑に打ち勝ちながら、勉強するのも良い体験になると思います。頑張って下さい。
今朝は山田洋次監督の言葉を読んで、感じたことをお話ししました。